産後に体重が減らない、つらいむくみに悩んでいるなら、体の内側から巡りを整える根本的なアプローチが解決の鍵です。多くの産後ママが直面するこの悩みは、あなたの努力不足が原因ではありません。体の仕組みを正しく理解し、適切なケアを行えば、体はきちんと応えてくれます。
この記事では、なぜ体重が減らずむくんでしまうのかという4つの根本原因と、育児の合間に無理なく実践できる具体的な解消法を徹底解説します。
読み終える頃には、焦りや不安が「なるほど!」という納得に変わり、自分を慈しみながら体と向き合うための、前向きな一歩が踏み出せるはずです。

この記事の監修者
近藤 好美
ORIENTAL GREEN 銀座インディバ
オーナーセラピスト/インディバスーパーバイザー
セラピスト歴25年、インディバ施術歴20年以上の経験を持つ、身体のラインとコンディションを整えるプロフェッショナル。これまでに3,000人以上の身体の悩みに向き合い、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの施術を提供。
目次
あなたの体重が減らない・むくむ原因はどのタイプ?
ご自身の生活を振り返り、当てはまる項目をチェックしてみましょう。これから解説する原因のどこに自分が当てはまりそうか、あたりをつけることで、あなたに本当に必要なケアが見つけやすくなります。
- 食事が不規則で、パンやおにぎりだけで済ませがち
- 1日中ほぼ座っているか、同じ姿勢で授乳している
- まとまった睡眠が取れず、常に寝不足だと感じる
- 甘いものや味の濃いものが無性に食べたくなる
- 理由もなくイライラしたり、気分が落ち込んだりすることが多い
- 出産前より、足先や手先の冷えが気になるようになった
いかがでしたか。チェックが多くついた項目は、あなたの不調の大きな原因になっている可能性があります。でも大丈夫。一つひとつ、解決策を一緒に見ていきましょう。
産後に体重が減らない・むくむ4つの医学的メカニズム
産後の体重が減りにくいのは、決してあなたの努力不足や気のせいではありません。体の中では、主に4つの大きな変化が起きています。この体の仕組みを理解することが、悩解消への第一歩です。

近藤 好美
ORIENTAL GREEN
サロンにいらっしゃるお客様も、これらの原因が2つ、3つと複雑に重なっている方がほとんどです。「私の体、もうダメかも…」と落ち込む必要は全くありませんよ。
むしろ、ご自身の体の状態を正しく知ることは、改善への最短ルートを見つけるための大切な一歩。ここから一緒に、原因を紐解いていきましょう。
1.ホルモンバランスの激変
体は、ホルモンバランスの急激な変化という、大きな嵐に見舞われています。妊娠中に分泌されていた女性ホルモン(プロゲステロン、エストロゲン)が産後に急減することで、自律神経が乱れ、体に水分を溜め込みやすくなります。これが、なかなか解消されない「むくみ」の大きな原因の一つです。
さらに、このホルモンの乱れは精神的なバランスにも影響し、食欲のコントロールを難しくさせたり、イライラや気分の落ち込みを引き起こしたりします。
「なんだか食欲が止まらない…」と感じるのも、意志の弱さではなく、ホルモンの影響が考えられるのです。
2.出産による骨盤の開き・歪み
骨盤は、出産時に赤ちゃんが通りやすいよう、「リラキシン」というホルモンの影響で自然に緩み、開きます。
しかし、この開いた骨盤が元の位置に正しく戻らないと、骨盤内にあった子宮や腸などの内臓が下がり、血流やリンパの流れを圧迫してしまいます。その結果、下半身の代謝が著しく低下し、痩せにくく、むくみやすい体質につながるのです。

近藤 好美
ORIENTAL GREEN
本当に多くのお客様が、この「骨盤が開いてグラグラする感覚」や「上半身は痩せたのに、下半身だけが全く痩せない」というお悩みを抱えていらっしゃいます。
骨盤が開いたままだと、その周辺の血流が滞り、まるで“冷えの芯”ができてしまうような状態に。インディバのような深部加温は、この“冷えの芯”に直接アプローチして、内側から血の巡る温かい体を取り戻すお手伝いができるんですよ。
参考元:トコちゃんベルトの青葉 公式サイト「妊娠中~産後の骨盤のしくみ」
骨盤整体高田馬場施術室「妊娠中・出産・産後の骨盤の状態と骨盤ケアの方法」
3.水分代謝の低下と血液循環の悪化
むくみの直接的な原因は、体内の水分がうまく排出されずに滞ってしまうことです。育児中は、抱っこや授乳で同じ姿勢が続いたり、運動不足になったりしがち。これにより、全身の筋肉、特に下半身の筋肉が硬直し、血流やリンパの流れが滞ってしまいます。
特に産後は体が水分を溜め込みやすく、人によっては「象の足」のようにパンパンになってしまうことも。そんなつらい足のむくみに効くツボやケアについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
また、母乳育児のママは、母乳を作るために多くの水分が使われるため、意識して水分を摂らないと「隠れ水分不足」に陥りがちです。水分が不足すると、体は危険を察知してさらに水分を溜め込もうとするため、かえってむくみが悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
4.育児による生活習慣の乱れ
育児中心の生活は、これまでの生活リズムを大きく変えます。特に「睡眠不足」は、代謝を低下させ、食欲を増進させるストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を促します。これにより、「あまり食べていないのに太る」という状態を引き起こすのです。
不規則な食事やストレスも、自律神経を乱し、血行不良や代謝の低下に直結します。このように、産後の体は様々な要因が複雑に絡み合い、痩せにくく、むくみやすい状態になっているのです。
参考元:医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター「痩せられないワケ」
今日からできる!産後の体重減少とむくみ解消のための食事術
厳しい食事制限は、ストレスを増やし逆効果になることも。産後の食事で大切なのは、「何を制限するか」ではなく、「何を積極的に摂るか」です。体を内側から温め、巡りを良くするための3つのルールをご紹介します。
より詳しく即効性が期待できる食べ物や飲み物について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
むくみを流す「カリウム」と巡りを生む「タンパク質」を意識する
体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出してくれる「カリウム」と、血液や筋肉の材料となる「タンパク質」を積極的に摂りましょう。
タンパク質が不足すると筋肉量が減り、基礎代謝が落ちてしまうため、意識して補給することが大切です。
食材カテゴリ | おすすめ食材 |
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野菜・果物 | ほうれん草、アボカド、きゅうり、バナナ、キウイ |
肉・魚 | 鶏むね肉、ささみ、鮭、あじ、いわし |
大豆製品 | 豆腐、納豆、豆乳、おから |
その他 | わかめなどの海藻類、きのこ類 |
これらの食材は、コンビニやスーパーで手軽に手に入るものばかり。まずは一品、食事にプラスすることから始めてみてください。
体を温め、巡りを良くする「温活」食材を取り入れる
- 飲み物は常温か温かいものを選ぶ
冷たい飲み物は内臓を直接冷やしてしまいます。白湯やルイボスティー、麦茶などがおすすめです。 - 薬味やスパイスを活用する
お味噌汁やスープに「ショウガ」や「ネギ」、「七味」を少しプラスするだけで、体を温める効果が期待できます。 - 根菜類を食事の中心に
土の中で育つごぼう、にんじん、れんこんなどの根菜類は、体を温める作用があると言われています。
「3食+補食」で血糖値を安定させる
育児中は食事時間が不規則になりがちですが、食事を抜くと空腹感が強まり、次の食事で血糖値が急上昇して脂肪を溜め込みやすくなります。
食事は3食きちんと摂り、間にお腹が空いたら栄養のある補食を挟むのが理想です。
育児のすきま時間でOK!骨盤ケアとむくみ解消セルフケア
「運動する時間なんてない!」というママにこそ試してほしい、1回5分からでOKの簡単なセルフケアです。大切なのは、血流やリンパの流れが滞りやすい「関節」を動かすことです。
基本の骨盤ケア▶︎寝たままできる骨盤底筋トレーニング
骨盤の底で内臓を支えている「骨盤底筋」を鍛えることは、ぽっこりお腹の解消や尿漏れ改善にも繋がります。仰向けに寝て、膝を立てた状態で行いましょう。
- 息をゆっくり吐きながら、膣と肛門をキュッと締めるイメージで力を入れ、5秒キープします。
- 息をゆっくり吸いながら、力をフッと抜いてリラックスします。
これを10回ほど繰り返します。産後1ヶ月検診で問題がなければ、いつから始めても大丈夫です。帝王切開の方も、傷の痛みがなければ行えます。
むくみスッキリ▶︎足首から始める巡り改善マッサージ
下半身に溜まった水分や老廃物を心臓に戻すポンプの役割を果たすのが「ふくらはぎ」の筋肉です。まず、その付け根である「足首」をほぐすことが非常に重要です。
- 椅子に座り、片方の足首をもう片方の膝の上に乗せ、足の指の間に手の指を入れて、足首をゆっくり大きく10回まわします。(反対回しも)
- 両手の親指で、くるぶしの周りやアキレス腱のあたりを優しく押します。
- 足首から膝の裏に向かって、ふくらはぎ全体を両手で包み込むように、優しくさすり上げます。
お風呂上がりなど、体が温まっている時にボディクリームやオイルをつけて行うと、滑りが良くなりリラックス効果も高まるのでおすすめです。
こうしたマッサージは、むくみだけでなく、いつの間にかできてしまったふくらはぎの凸凹セルライトが気になる方にもおすすめです。
全身の巡りを改善▶︎「ながら」でできる肩甲骨ストレッチ
授乳や抱っこで凝り固まりがちな肩甲骨周りには、代謝を上げる褐色脂肪細胞が集まっています。ここをほぐすことで、効率よく全身の血流を促進できます。
【授乳しながらできる簡単ストレッチ】
授乳中に、赤ちゃんの頭を支えていない方の腕を、ゆっくり大きく前回し・後ろ回しを5回ずつ行いましょう。これだけでも、肩周りの血流が良くなるのを感じられるはずです。
【要注意】産後ダイエットで絶対にやってはいけないこと
早く結果を出したいと焦る気持ちから、間違った方法に手を出してしまうと、かえって体を傷つけ、回復を遅らせてしまいます。ご自身の体を守るために、以下の方法は絶対に避けてください。
- 極端な食事制限(〇〇だけダイエット、糖質完全カットなど)
母乳の質が低下したり、体調不良になったりするだけでなく、筋肉が落ちてさらに痩せにくい体になる可能性があります。 - 産後すぐの激しい運動(腹筋、ジョギング、骨盤が不安定な状態での筋トレ)
まだ緩んでいる骨盤や靭帯に大きな負担をかけ、腰痛や膝痛の原因になります。 - 自己判断での下剤や利尿作用の強いサプリの使用
必要な栄養素まで排出してしまい、脱水症状や電解質異常を引き起こす危険性があります。
よくある質問(Q&A)
Q. 産後の体型はいつ頃までに戻すのが理想ですか?
個人差が非常に大きいですが、一般的に体の骨格やホルモンバランスが落ち着くまでには、産後6ヶ月〜1年ほどかかると言われています。医学的に「産褥期」と呼ばれる産後6〜8週間は、まず体を休めることを最優先してください。周りと比べず、ご自身のペースを何よりも大切にすることが、結果的に一番の近道です。
Q. 母乳育児だと痩せやすいと聞きましたが、全く痩せません…
確かに母乳育児は1日約500〜700kcalのカロリーを消費しますが、同時にお腹が空きやすく、知らず知らずのうちに「補給カロリーが消費カロリーを上回っている」ケースは少なくありません。また、この記事で解説したホルモンバランスの乱れや骨盤の歪み、睡眠不足といった要因が複合的に絡んでいる可能性が高いです。

近藤 好美
ORIENTAL GREEN
このご質問、サロンでも本当によく伺います。「むしろ食欲が増して太ってしまった」という方も決して珍しくありません。母乳育児は“痩せるための魔法”ではなく、あくまで“消費カロリーが増える一因”と捉えるのが良いでしょう。
大切なのは、消費カロリーが増えている今だからこそ、質の良い栄養を摂って巡りの良い体を作ること。そうすれば、体は自然とあなたに応えてくれますよ。
参考元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版) エネルギー・栄養素」
Q. どのくらい改善しなかったら、専門家に相談すべきですか?
もしセルフケアを続けてもむくみが全く改善しない、指で押した跡がなかなか戻らない、体重減少どころか増加が続く、といった場合は、一度専門家を頼ることをお勧めします。また、体の不調だけでなく、気分の落ち込みが2週間以上続く場合は、一人で抱え込まずに、産婦人科や地域の保健センター、心療内科などへ相談してください。
自分を慈しむ時間も、大切な育児の一部です
今回は、産後に体重が減らず、むくんでしまう原因と、その解消法について解説しました。
- 産後の不調はホルモン・骨盤・血行不良・生活習慣の4つが原因
- 食事は制限するのではなく「温活」と「巡り」を意識した食材を選ぶ
- 運動は「関節」を動かす簡単なセルフケアから始める
- 何よりも他人と比べず、自分のペースを大切にすること
産後の体型変化は、今回ご紹介した体重やむくみだけの問題ではありません。「もしかして、このままいわゆる“おばさん体型”になってしまうのでは…」と不安に感じているなら、ぜひこちらの記事もご覧ください。産後6ヶ月以降に効果的なダイエット法もご紹介しています。
目まぐるしい毎日の中で、自分のことはつい後回しになりがちですよね。しかし、ママであるあなたが心身ともに健康で、笑顔でいることが、赤ちゃんにとって何よりの栄養になります。自分の体を大切にケアする時間は、決して自分本位な時間ではなく、大切な育児の一部なのです。
まずは今日ご紹介した中から、一つでも「これならできそう」と思えるものを見つけて、試してみてください。その小さな一歩が、あなたの心と体を、必ず良い方向へ導いてくれるはずです。応援しています。